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一所懸命のベクトル

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  ● もう行きたくないお店
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2年ほど前の話になりますが、立て続けに、二度と行きたくないな、
と思わせるお店に出くわしました。
ひとつは、近所の串揚げ屋さん。
私、串揚げは結構好きなんですが、うちの近所に新しく出来た
串揚げ屋さんを見つけたので、かみさんと二人でいってきたんです。
お店に入ると、接客係の若い男の店員さんが、それはもう
一所懸命接客してくれました。
料理の説明も詳しくしてくれるし、しょっちゅう話しかけてくれるし、
色々質問も投げかけてくれるし……
しかし、彼が一所懸命話をしてくるがゆえに、久しぶりにゆっくりと
かみさんと話をしようと思ったのに、彼への対応に追われて、
ちっとも会話が出来ませんでした……
もうひとつは、行く前から行きたくなくなってしまったお店。
お昼時の時間が空いた仕事の合間に、借りていたビデオを返そうと、
自転車にまたがって、ビデオレンタルショップに向かいました。
お店について、駐輪場にはいったまさにそのとき。
ちょっと離れたところから
「すいませ~~~ん!!!!」
という叫び声とともに、女の人がこちらに向かって走ってきました。
何だろう、オレ、何か落としたかな、そう思って立ち止まり、
彼女が来るのを待ちました。
息せき切って走ってきた彼女は、胸に抱えたチラシの束から
一枚抜き取り、私に突き出しながら
「今、このあたりを歩いている人に声かけているんですが、
 明日あそこのお店で自然食品のお店を開店するんです。
 で、5日は開店記念で自然酵母を使った食パン一斤を
 100円でサービスするんです。350本限定ですが、
 体に優しい素材だけを使ったとってもおいしい……」
と、まくし立てるように説明し始めたんです。
私は、自転車に跨りっぱなしの状態で、あっけに取られた状態のまま
彼女の一方的なトークを浴びていましたが、やがて気を取り直し、
「申し訳ないんですが、明日は朝から夜遅くまで仕事で
 出払ってまして、お店によるのはちょっと難しくて……」
と言い訳しながら、逃げるように自転車を置いてビデオレンタル
ショップの中に逃げ込んでしまいました……
 
 


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  ● その一所懸命をどこに向けるか
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今回のネタになってしまったお二人に共通していることは
  ■ 一所懸命
というところです。
一所懸命というのは、とってもいいことだといわれています。
仕事でも「もっと一所懸命にやれ!」なんてハッパかけられたり
する人も結構いるんじゃないでしょうか。
それに、いい加減、手抜き、なんていう言葉と比べたら、
断然すばらしい輝きを持った言葉だと思います。
しかし、今回の二人の「一所懸命」は、本当に迷惑でした。
こんな「一所懸命」はちょっと願い下げですよね。
ゆえに、今回の体験を通じて、私は
「『一所懸命』は迷惑千万。やりすぎず、ほどほどが一番だ!」
ということを言いたい……訳では、もちろんありません。
よく、こういった迷惑な一所懸命さを見てしまうと結構多くの人が
「やっぱりやりすぎはよくないよね」
と結論づけてしまいます。
でも、彼らが間違っているのは、一所懸命のエネルギー量ではなく、
そのエネルギーを注ぐ方向が、間違っているだけなんです。
実は、以前の私は、この二人のように方向性を間違えた一所懸命さで
結構色々な人に迷惑がられました。
串揚げ屋をでたあと、うちのかみさんがいみじくも言った言葉が
「昔のお父ちゃん(私のこと)を見ているみたいだったよ」
であり、そして、私自身も全く同じことを思っていたのでした。
じゃあ、今の私は一所懸命にならず、ほどほどにしているかと言うと、
全然そんなことはなく、むしろ以前以上にエネルギッシュに一所懸命に
なっています。
でも、以前と違うのは、
  ★ その一所懸命を自分の行動ではなく人の理解に向ける
ことに費やしているのです。
 ・一所懸命相手の言葉を聴く。
 ・一所懸命相手の状況を理解する
 ・一所懸命相手の要望を知る。
 ・一所懸命相手の気持ちを感じる
こんなことに一所懸命になっていると、今まであれほどうまく行かなかった
セミナーや営業が、あっけないほどうまく行くようになったんです。
串揚げ屋のお兄さんも、自然食品のビラ配りの人も、なにに一所懸命に
なっているかと言うと、
  ■自分に与えられた業務
であり、その一所懸命さには、その業務を提供するお客様に向けた
ものは一切ありません。
 愛想よく振舞わなければ、という一所懸命な気持ちで、
 お客さんの会話に割って入るように話しかけてくるお兄さん。
 新規店のことを伝えなければ、という一所懸命な気持ちで、
 ビデオレンタル屋に入ろうとする人を捕まえて話さないお姉さん。
二人とも、一所懸命さのエネルギーを自分に注ぎきってしまい、
話している相手の事に気持ちが向かなかったがために、大切な
お客さんを逃がしてしまったんです。
仕事に取り組む時に必要な一所懸命は、自分のやるべきことに
向かわせるのではなく、
 ★ 対面する相手を知る事に注ぎ込む事
が重要なんですね。
その上で、アプローチ方法を工夫したり、話し方の組み立てを工夫すれば、
あなたの望む結果が得られるようになる事でしょう。
串揚げ屋のお兄さんも、私たちの会話や雰囲気を汲み取って、
話しかけるトーンやタイミングをみてくれたら、きっとまた私も
お店に通うようになるでしょう。
チラシを配っているお姉さんも、急いでいる相手には手短な説明、
興味をもってくれた人には、じっくりとわかりやすい説明と、
相手に合わせてトークを使い分けてくれたら、私も一度お店を
覗いてみようかな、と思ったかもしれません。
  ★あなたの「一所懸命」は、どこにベクトルが向いていますか?
もし、一所懸命頑張ってもトークがうまく行かないなあ、
と感じるのであれば、ぜひこの一所懸命ベクトルの向きに注意して
見てくださいね。
 
 
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           今日のトーク術・まとめ
      一所懸命のベクトルを間違えないようにしよう!
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一所懸命に物事に取り組むというのは、大変素晴らしいことです。
しかし、素晴らしいがゆえに、非常に危ない要素も含んでいます。
それは、
 ■ 一所懸命やることだけで、満足してしまう
ということ。
串揚げ屋のお兄さんも、自然食品屋のお姉さんも、一所懸命
仕事に取り組んで、その行為自体に満足しているかもしれません。
しかし、その満足は、お客さんを喜ばせない自己満足でしかありません。
よく、組織の中にいる人などで、
「数字だけでなく、プロセスも評価してくれ」
という人がいます。私自身も、数字だけで評価することは
問題があると思います。
が、もしその人が顧客を喜ばすことがない、
 ■ 自己満足的一所懸命
を、評価対象にしてくれ、ということであれば、
それは話が違う、ということになりますよね。
 ★ ビジネスは、自分を満足させることでなく、人を満足させること
ということを、まずは心にとめ、
 ★ 人を満足させることが自分の満足とする
ということに自分のやり甲斐をおいて、一所懸命仕事に取り組んでみると、
気持ちの良い毎日が送れるかもしれませんね。
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  ● 編集後記
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昨日と今日、うちの啓助(オス猫)が去勢手術をしました。
昨日、動物病院に預け、今朝受け取ってきたんですが、
やっぱり猫とはいえ、家族が一人減ると寂しいですね。
一緒に暮らしている、兄弟猫のあつみも、なんか落ち着き無い
感じでした。
そして今日、今日病院に引き取りに行ったんですが、もう
顔を見るなりニャーニャー鳴いてすり寄ってきて。
ジーンと涙ぐみながら、かみさんと二人で
「よく頑張ったねぇ! 偉かったねぇ!」
と、頭なでまくってやりました。
猫を飼い始める前は、こんなことしてる人がいたら、
「馬鹿じゃないの?」
なんてこと思っただろうに、いざ自分が当事者になったら
やっぱり、馬鹿になっちゃうもんなんですねぇ……

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