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ポール・ポッツのコンサートにて

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  ● ポール・ポッツのコンサートにときめきつつも……
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昨日のメールマガジンを、オーチャードホールの喫茶コーナーで
開演時間ぎりぎりの19時1分前に書き上げ、慌てて発行手続きを
取って座席にダッシュ。
何とか間に合って、これで心安らかにポールのコンサートに専念
出来る、と一安心。
そして、コンサートが始まり、序曲(overture)が流れはじめました。
これから演奏する曲がメドレーで流れ、否が応でも期待に胸が
ふくらみます。
そして、序曲が終わり、ポール登場。
会場は割れんばかりの拍手でありました。
そして、演奏開始。期待通りの素晴らしい演奏に加え、
曲と曲との間にポール自身が語るエピソードも面白く、
私たち観客は、笑いながら、しみじみしながら、彼の歌と
話を楽しみました。
そして、エンディングを迎え、アンコール。
彼が一躍スターダムにのし上がったきっかけとなった、
あのオーディション番組「Britain’s Got Talent」で歌った、
トゥーランドットの中のアリア「誰も寝てはならぬ」が
流れ、彼の歌声に魂をわしづかみにされながら滂沱の涙を流し、
歓声を上げながらスタンディングオベーション……となる予定でした。
少なくとも、そう心の準備をしていたんです、私は。
しかし、ジーンとは来たものの、期待した興奮と感動まで、
なぜかいきませんでした。
客席は、半分以上の方たちが、スタンディングオベーションをして
いましたが、私はなぜか立ち上がることが出来ませんでした。
いったい、何でなんだろう。
事前の期待が、あまりにも高すぎたのだろうか。
あまりにも事前に彼の歌を聴き過ぎて、無意識のうちに
聞き飽きてしまったのだろうか。
首をひねりながら家に帰り着き、そして、改めてオーディションで
合格したときの歌と映像をYoutubeで見たんですが、やっぱり
感動するんですよね。
いや、ひょっとしたら、映像にだまされているかもしれない、
と思い、彼のデビューアルバム「ワンチャンス」を聞いたんです。
やっぱりグッとくるんですね。
今も聞きながら、時々、あまりのすばらしさに、手が止まって
涙をぬぐってしまう。
あれた映像越しや、安いスピーカー越しで聞いていて、これだけ
感動するんだから、生で歌声が聞けたら、もっと感動しても
良いはずなのに……
いったい、なんで初めて聞いたときと感動の差があったのでしょうか?
 
 


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  ● ストーリーから離れるとき
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ポールが注目されたのは、歌のすばらしさもさることながら、
その誕生のドラマティックさに負うところが大きいでしょう。
元・携帯電話のセールスマンで、全くの無名。
歌は好きだったけれど、自分に自信が持てず、くすぶっていたとき。
自分を花開かせるために出場したオーディション番組。
この唯一のチャンス、を見事ものにし、一夜にして全英の注目の的に
なった、ポール・ポッツ。
この、シンデレラストーリーが皆の共感を呼び、ファーストアルバム
「ワン・チャンス」は、全英初登場一位を記録し、全世界的にも
発売され、全国ツアーも開催されることとなりました。
今回の日本公演も、オペラなど聴いたこともない、という人も
このシンデレラストーリーを聞きつけ、参加され、そして、
彼の歌声と共に、そのストーリーとあわせて、感動していたようでした。
確かに、ストーリーって、人を感動させるんですよね。
しかし、その一方で、ストーリーは飽きられるものでもあります。
実際、私自身、そのシンデレラストーリーを反芻しながら
感動しようという心の準備をしていたんですが、すでに
その疑似体験は、何百回とやってしまっていたせいか、
自分でも気がつかないうちに、そのストーリーに感動することには
飽きてしまっていたようなんですね。
だから、ストーリーも含めて感動しようとしていたにもかかわらず、
あの、オーディション番組で合格したときほどの感動は、味わえ
なかったんだと思うんです。
ショービジネスに立つ人間は、感動を提供する必要があります。
ポールは、そのスタートを、自分に自信のない形態の営業マンが、
満を持して自分の生き方を変えるチャレンジをする、という
 ★ 自らのドラマチックなストーリー
を見せました。
しかし、その感動は、立ち上がりの時の一歩には有効でありますが、
そこから先、人を感動させ続けられることは、難しいでしょう。
ストーリーに飽きられても、それでも尚、聞き手を感動させるためには、
 ★ その人のストーリーよりも、その人のパッション
の強さに、かかってくるのだと思うんです。
先のオーディション番組で、彼が優勝したのも、その時の
彼の歌声に、ここ一番といっていいほどのパッションがあった
からこそ、あれだけ人の心を打ったのだと思います。
私も、そのパッションに打たれて、感動して涙を流したのでしょう。
しかし、その後、彼の存在を有名にしたのは、彼のパッションでなく、
彼自身のストーリーにすり替わってしまったような気がするんです。
多くの人は、彼のパッションから生み出された、魂を揺さぶる歌ではなく、
彼のサクセスストーリーに共感、感動していったように思えるんです。
自分自身が世に出て行こうという第一歩として、このストーリーを
前面に出した売り方は良いかもしれません。
でも、ショービジネスでしっかりと生き残っていくためには、
お涙頂戴のストーリーだけでは生き残っていけません。
 ★ 自分自身がこの仕事に取り組むパッション
というものが、重要だと、私は想うんですよね。
そのためには、自らのストーリーで売り出した人間は、
 ★ 自らのストーリーから決別するとき
を、明確に意識して、そこに備える意識が必要なのかもしれませんね。
 
 
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           今日のトーク術・まとめ
    人を引きつける要因は、ストーリーの後はパッション
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自分が表に出て行くときの最初のとっかかりは、自らのストーリー、
ということは、前にも書いたように、素晴らしいことと思います。
私自身、この仕事を始めるときに、一番前面に押し出してアピール
したことは、ふがいない自分が、あるきっかけで心を入れ替えて、
自分の悪習慣を克服した、というストーリーでしたから。
でも、先に書いたとおり、いつか、自分を売り出してくれたストーリーは、
周りの人に飽きられてしまうのです。
それでは、その立ち上がりのストーリーは、すぐに廃れてしまう。
これだけなら、人を引きつける、ということについては、すぐに
役に立たなくなってしまうかもしれません。
しかし、人の役には立たなかったとしても、
 ★ 自分自身のパッションを持続させるため
には、とても役に立つんだと、私は想うんですよね。
自分が、なぜこの仕事を目指したのか。
自分がこの仕事に本気で取り組む理由とは何か。
そんな、自分の仕事に取り組むパッションを、きちんと維持して
いくために
 ★自分自身を鼓舞する、パッションが生まれたストーリー
を持ち合わせていると、自身の仕事の取り組みも変わってくるんだと
思うんですよね。
私自身、今でもセミナーを行うときには、自分自身がこの仕事に
取り組み始めた時のストーリーを反芻しています。
そして、その反芻の中で、自分がなぜこの仕事を選び、そして、
この仕事で何を実現していきたいのか、考えるようにしています。
そうやって、ともすると、慣れや惰性に流されてしまうかも
しれない、自分の仕事に、ほどよい刺激と緊張感を与えるように
しているんですね。
「初心忘れるべからず」 
という言葉がありますが、これって、まさにこういうことを言うんじゃ
ないかと思えてならないんですよ。
 
 
 
 
 
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  ● 編集後記
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でも、なんだかんだ言っても、ポールのコンサートは、
とても素晴らしかったですね。
オーディションの時には、おどおどしていた頼りない姿はもうなく、
堂々としたショーマンの顔になっていました。
それでいて、とても謙虚で、ステージの後半では、このコンサートに
関わったすべての人たちに感謝のメッセージを投げかけたり、
ステージから下がるときには、もう、四方八方に向かって、
お辞儀をしていきながら、去っていきました。
本当に、人柄が偲ばれ、そして、本当に自分の夢が叶ったということに
喜んでいたような、そんな感じを受け、とても気持ちのいい人でしたよ。
また、日本公演に来て欲しいなあ。そしたら、また聞きに来ますよ!
 
 

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