━━━━━
● コミュニケーション不足を補うために……
─────
「わかりました。ではこれから部下に対して、今まで以上に
コミュニケーションを取ることにします」
と答えた坂田さん(39歳・仮名)に対し、私は
「いや、これからは、コミュニケーションを取らないでください」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
といいました。
それを聞いた坂田さんは、は? とびっくりした顔をして、
そのまま固まってしまいました。
ことの経緯はこうなんです。
私の自己表現セミナーに参加してくださった坂田さん。懇親会の席で、
たまたま会社の話になりました。
聞くところによると、坂田さんは某企業の広報部の課長さん。
部下との関係は比較的良好で、風通しも良い部署にお勤めとのこと。
自称気さくな坂田さんは、部下と話す姿勢を常に意識していました。
会議も積極的に開くとともに、通常業務中も、こまめに話しかけ
積極的にコミュニケーションに勤めていたそうです。
ところが、先日部下同士の会話を偶然耳にし、愕然としました。
部下A「先輩、この仕事ってどうしてこうなるんですか?」
部下B「俺もよくわかんないよ。まあ、課長がやれっていうんだから
よけいなこと考えないでいわれたとおりにやっとけばいいよ」
部下A「いいんですか、そんなんで」
部下B「いいも何も、きちんと教えてくれないんだからしょうがないよ。
とにかく、課長のいうとおりに仕上げときな」
坂田さんは、説明もなしに仕事を渡したりはしていなかったそうです。
この仕事の背景から、この仕事を行うことで会社がどうなるのかも含めて
しつこいかな、と思うくらいたっぷりと説明をしていたそうなんです。
だから、部下たちもきちんと自分の仕事を理解してやってくれていると
思っていたのに……
坂田さんは、私にそう語ってくれました。
「うーん、どうも部下の方たちとのやりとりが不足しているなぁ……」
私がぼそりとつぶやくと、坂田さんは
「一生懸命やっていると思ったんですが、まだ足りないですか……」
といい、そして
「わかりました。ではこれから部下に対して、今まで以上に
コミュニケーションを取ることにします!
まず、今までの週1回のミーティングを3回に増やして……」
と言い始めたんです。
そこで私は、あわてて止めに入りました。
「いや、これからは、コミュニケーションを取らないでください」
と。
私がコミュニケーションを止めた理由、皆さんわかりますか?
━━━━━
● コミュニケーションという言葉の罠
─────
最近よく聞くコミュニケーションという言葉。
本もたくさん出ているようですし、この手のセミナーも
世の中にたくさんあります。
このコミュニケーションという言葉、非常に一般的で
よく知られているように思われております。
一応辞書的意味を押さえておきましょうか。
======================================================================
コミュニケーション
人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと。
言語・文字その他視覚・聴覚に訴える身振り・表情・声などの
手段によって行う。
(三省堂提供「大辞林 第二版」より)
======================================================================
「なんだよ、そんなこと、辞書引くまでもなく知ってるよ!」
ひょっとしたらあなたはそういうかもしれません。
確かに、意味は皆さんご存じだと思います。
が、実はこの言葉、人によって全然解釈の意味が
違っているケースが多い。
■特に、コミュニケーションできていない人ほど、
意味を間違って取っているケースが多いんです!
たとえば、今回出てきた坂田さんの場合、コミュニケーションという
言葉を「話すこと」だと思っているふしが見受けられます。
少なくとも「互いに伝達し合う」という、肝心な部分が押さえられて
いないように思います。
つまり、坂田さんがコミュニケーションだと思っている行動は
■一方的な通知
となってしまっているわけです。
こういう人がコミュニケーションをもっと取ろうとすると、
部下の方たちとの心の溝は深まるばかりですよね。
だから、私は坂田さんに
■「コミュニケーションをとってはいけない」
と言ったわけです。
じゃあどういうアドバイスをしたらいいのか。
私はこう言いました
「当面坂田さんが発していい言葉は、相手に投げかける質問だけです。
そして、あとはただひたすら相手の話を聞くことに徹してください」
自分の情報を相手に伝えたければ、相手にあなたの情報を受け入れる
準備をさせないといけないんです。
そのために必要なことは、相手が自分のことを受け入れてくれていると
言う実感をしてもらうこと。
そのために一番有効な手段は
★相手に関心を示すこと
なんです。
だからこそ、コミュニケーションを開始するときは
1.質問を投げかける(あなたに興味があるという意思表示)
2.相手の話を聞く(あなたを受け入れていますよと言う姿勢)
という2ステップを踏むと、相手の心が開きやすくなるわけです。
どうもコミュニケーションがうまくいかない、とお悩みの方は
ひょっとすると一方的な通知モードになっているかもしれません。
そんな自覚のある方は、まずは会話の始めにこの2ステップを
入れてみてください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……………‥‥
今日のトーク術・まとめ
コミュニケーションは一方的な通知じゃない!
相互に意志を伝達し合うために、まずは質問で心を開かせよう!
‥‥……………━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
自分の意志や考えを伝えたい、ということを考えてしまうと、ついつい
コミュニケーションをとることを忘れてしまいます。
でも、自分の考えを伝えたいときこそ、本当の意味での
コミュニケーションが必要なんですよね。
私もこれについては、以前はずいぶん悩まされました。
話しても話しても、何も伝わらないと
「こいつバカなんじゃないの?」
って思うんだけど。周りの誰もが同じ反応をしていると、
「バカはオレなのかなあ……」
と、だんだんトーンダウンしていって(^^;;
そんな私でも、まずはこの2ステップを心がけることで
ずいぶん話をきちんと聞いてもらえるようになりました。
まあ、相手に自分の話を聞いてもらうためには、他にもいくつか
気をつけなければいけないこともあるのですが、それはまたおいおい
お話していきたいと思います。
ということで、また次回お会いいたしましょう!
━━━━━
● 自分を売るのって難しい……
─────
日本人って、沈黙は金なり、とか男は黙って何とかビールとか、
とにかく、自分自身の言葉で自分をアピールすることを良しと
しなかった風潮がありましたよね。
でも、今の時代、黙っていてもわかってもらえる、ということは
まずないわけでして、自分をきちんとアピール出来ることが、
とても重要になります。
とはいっても、アメリカ風に、自分のことをガツンガツンと
パワフルに出していくアピール方法は、なかなか受け入れられにくいもの。
やっぱり、ここは日本。日本人はやはり、奥ゆかしさみたいなものを
無視したアピール手法は、なかなかなじめないものです。
このジレンマを解決するための自己アピール方法とは……
続きはこちらへ
→ http://sp.m-stn.com/chk/060210a.html
━━━━━
● 編集後記
─────
最近、企業研修で地方に行くことが多くなりまして、
先週・今週は、三島と大磯に行ってきました。
三島は静岡県だし、大磯は保養地というイメージがあったので、
東京から離れたところにあると思っていたんですが、
結構都心に近いんですね。
三島だって、静岡県なのに、東京駅まで1時間かからないし。
大磯も、東京駅までの移動時間は1時間くらいですし。
ちなみに、私は東京都民ですが、東京駅まで1時間半近くかかります。
なーんか、納得行かない気持ちがするのはなんででしょう……