コミュニケーションにおいて、相手に共感する、ということはとても重要だ、という論調が、特にここ10年くらいで語られるようになりました。
コミュニケーションや会話をテーマにした情報には、かなりの割合でこの「共感は大切だ」という文言が入ってきています。
では、この「共感」とはいったい何でしょうか。
文字面を見ると、共に感じる、と書かれているので、相手の感じている事を自分も感じること、と解釈できます。
もちろん、この解釈で間違っているわけではないのですが、人を育てるリーダーに求められる共感とは何か、というと、これだけの理解だと、足りないんですよね。
というのも、共感、という言葉には、さらにふたつの意味があり、リーダーは、その意味の違いを理解し、リーダーにとって必要な共感とはどちらなのかを理解する必要があるのです。
その、共感が持つふたつの意味を理解するために、和英辞典で共感を調べると出てくる、「sympathy」と「empathy」の違いについて考えていきましょう。
まず、sympathyですが、こちらは、語源を調べると、【sym+path+y】と分解できるとのこと。
接頭辞の【sym】は「一緒に」という意味があり、【path】は「感じる」、そして【y】は「状態」、というところから、
【sympathy】=「(相手の体験を)一緒に感じる状態」=共感
という事となるんですね。
では、empathyはどうか、というと、後半はsympathyと同じ、「感じる状態」なのですが、接頭辞の【em】には、「中へ」という意味といういみがあり、
【empathy】=「(相手の)中へ(入って)感じる状態」=共感
という事になります。
これだけだと、まだ意味が分からないと思うので、さらに事例を使って説明します。
例えば、相手が、飼っていた猫が亡くなって悲しんでいるとします。
この話を聞き、自分自身も飼っていた猫をなくした経験があり、その悲しみを思いだして、一緒に悲しい状態になっている、というのが、「sympathy」です。
これは、どういう状態か、というと、相手の感情を感じているように見えますが、実はそうではなく、相手のシチュエーションを借りて、自分の体験や価値観というフィルターをかけた上で、相手ではなく、自分の感情に浸っている状態なんですよね。
つまり、この状態の共感とは、自分の身勝手な感情に浸り、その感情に振り回されている、という状態なのです。
よく、共感していることを意思表示するために「わかるぅ~!!」という人がいますけれど、これなども、相手の感情を理解しているのではなく、相手の話を聞き、勝手に自分が感情的になっているだけのケースがほとんど。
だから、相手からすると、共感されているようにはとても思えない、なんてことがよくありまして、もはやこうなると、sympathyとも言えなくなってきます。
これ、修行途中のコーチやカウンセラー、セラピストの人たちがよく陥る状態なんですよね。
自分の価値観で共感したつもりになり、感情が乱されてしまっている状態。、
で、こうなってしまうと、冷静に相手を見て導くことは出来なくなります。
にもかかわらず、「自分は共感している」などと思い込んでしまうと、かなりイタイ状態になるでしょう。
では、empathyはどういう状態か。「相手の中に入る」という状態とはどういうことか。
イメージとしては、相手の中に入っていき、相手になりきって感じる、という状態です。
なんてことをいうと、
「そんなこと不可能だ! 超能力者じゃあるまいし」
と思うかもしれません。確かに、ここまで出来れば素晴らしいですが、誰もがそんなこと出来るはずもありません。
でも、それに近い状態になることは出来ます。
それは、どういう状態かというと、
★ 相手の話を、自分の経験や価値観などを使ってジャッジをせず、ノージャッジで受け入れる
ということなんですよね。
全てのフィルターを取り、相手が言っていること、その姿、その他含めた相手の状態を、とにかくノージャッジで受け入れる。身勝手な判断はしない。相手の気持ちを解った気にもならない。
ただひたすら、そうなんだ、そうなんだ、と受け入れて行く。
これが、リーダーが身に付けておきたい、empathy、つまりは共感の、第一歩なんですよね。
もちろん、これだけで、相手の感情を完璧に理解することが出来るか、といえば、そんなことはないのですが、少なくとも、そういう姿勢で、相手のことを受け入れて行けば、相手も、
「この人は、自分のことを、フィルター越しに見たりせず、ありのままの自分を理解しようとしてくれている」
と感じるでしょう。そして、信頼をベースにした深いコミュニケーションを取るときには、相手がこちらのことを、そう思ってもらい、心の扉を開いてもらうことが、まず大切になってくるのです。
なので、もしあなたが、自分には共感力がないと感じているならば、まずは、sympathyの共感とempathyの共感との違いを理解した上で、empathyの共感を意識して相手の話を聞くトレーニングをしてみて下さい。
そして、指導、教育、フィードバック、指示・命令といったものは、この教官を経て、相手の心の扉を開いた上で行っていきましょう。
そうすれば、きっと、自分の言葉が、より相手に届きやすくなってくることが実感出来ると思いますよ。
今日のまとめ
- リーダーに求められる共感の第一歩は、相手の言動を、まずはノージャッジで受け入れること