ビジネススキルには、色々なものがありますよね。
私の専門領域のものですと、例えば、コーチング、とか、ティーチング、なんてものがあります。
で、こういうスキルを学び始める人のうち、けっこうな数の人が取ってしまいがちな行動が、
■ 原理主義者になってしまう
というパターン。つまり、学んだことが絶対で、それしかやろうとしない、という人です。
コーチングなどが一次ブームになったとき、こういう人が結構出て来て、部下とコミュニケーションを取るときには、必ずコーチングの手法で最初から最後まで会話をしようとする人がかなりの数いたようです。
で、そういう人たちはどうなったかというと、部下とのコミュニケーションが上手く取れない。
答えを教えてはいけない、答えを部下の中から引き出さないと、と思いながら、まどろっこしい質問を繰り返し、今まで以上に煙たがられる存在になってしまった、なんて人も出て来たりしたようです。
で、結果的に、「コーチングって、使えないよな」的な印象を持たれてしまい、ブームが去っていった、なんてこともあったようです。
で、こういう話を聞くと、多くの人が、そうだそうだと頷きながら、
「こう言うのは、一つのスキルの原理主義者になっちゃダメですよね」
と言う。それについては、私もまったく同意であります。ただ、その人たちの中で、好言葉を続ける人がいるんですよ。
「やっぱり、スキルの使い方も、バランスが大事ですよね」
と。
で、そういう人たちが、そのバランス感覚をもって、上手く部下とコミュニケーションが取れているのならば良いのですが、やっぱり、けっこうな数の人が、部下とのコミュニケーションに問題を抱えているようなんですよね。
では、この、バランス派が、上手く言っていない原因はどこにあるのか。
私が考えるに、その一番の原因は、「バランス良くスキルを使おう」とする、その考え方そのものにあるんです。
それはなぜか。わかりやすくするために、家を建てるプロセスを事例に説明しましょう。
アナアタは大工さんで、これから家を建てるとします。
コーチングなどのビジネススキルは、金槌とかのこぎり、と言った、大工道具に相当するものと考えて下さい。
原理主義者の人は、例えて言うなら、金槌一つで、家を建てようとするようなもので、そんなことで家など建つはずがありません。
まあ、これは分かりやすいですよね。
では、上手く行ってないバランス派の人はどんなことをしているか、というと、例えば、釘を打つときも、バランス良く、金槌やのこぎりを使って、打ち込もうとする。木材を切るときも、バランス良く、金槌やのこぎりを使って、切ろうとする、なんてことをやっているんですよね。
そうやって、意味不明なことをしながら、
「やっぱり、一つの道具の原理主義者になっちゃダメですよね。バランスが大事ですよね」
と言って、悪戦苦闘をしている。
これも、明らかにおかしいですよね。
正しいやり方は、当たり前ですが、「釘を打つときは、金槌を使い、木材を切るときは、のこぎりを使う」ということ。
つまり、スキルを使うときに必要な考え方は、バランスなどではなく、
★ どのタイミングで、どのスキルを使えばいいかを見極めること
なんですよね。
つまり、スキルを学んでも上手く行かない人は、そのスキルをどのタイミングで使うのかが解っていないから、なんです。
では、どこでそのスキルを使えばいいか、と言うことが解るためにはどうしたらいいか。
大工の例で言えば、釘が適切なところに打てるのも、木材を適切な長さで切ることが出来るのも、
★ 設計図と手順が明確になっているから
なのです。
これをコミュニケーションの例で言えば、コミュニケーション後の最終的なゴールイメージが明確にあるかどうか。
また、そのゴールにたどり着くまでに、どのようなプロセスでコミュニケーションを取っていけば良いかが分かっているか。
これらが解っていて、初めて、スキルの使いどころが明確になっていくのです。
例えば、最初はヒアリングから始まり、きちんと情報を集める、とか、そこで、現状をどのように部下が理解しているのかを把握したり、本人に自覚させたりするために、コーチングを使う、とか、最終的なゴールについての理解が欠落しているならば、それはティーチングで教えて理解させる、とか。
こういった、たどり着くゴールと、そこに至るまでのコミュニケーションの大きなプロセスやフレームワークを理解していないと、断片的なスキルをいくつ学んでも、使い物にならないんですよね。
ということで、一つのスキル原理主義者の方も、スキルはバランス派の人も、その学びと考え方で上手く行ってないとしたら、具体的なゴールをどこまで明確に持っているか、そして、そこに至るために必要なプロセスと考え方のフレームワークを理解しているか、ということを、胸に手を当てて振り返ってみて下さいね。
今日のポイント
- スキルを使いこなすポイントは、どのタイミングで、どのスキルを使うのかを見極めること
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