前回のお話はこちら
さて、病院で、即日入院・即日手術、と言い渡された私。
急にそんなこと言われても、心の準備も、
仕事の準備も、全く出来ていない。
幸い、今日明日は、社内仕事に当てていたので
融通はつくが、その次の日からは、自分のセミナー
やクライアントとのセッションも入っている。
私は、恐る恐る聞いてみた。
「明後日には退院できますか?」
先生は、呆れた顔をして、
「何を言ってるんですか!
1週間は入院してもらわないと!」
仕事人間である私は、それでも粘った。
「なら、とりあえず、今日は応急処置だけして
来週に手術をして頂く、というのは……」
先生は、私を戒めるように言った。
「それは危険です。もう、今の状況は、かなり
進行してしまっているので、今切らないと、
大変なことになりますよ」
うーむ、どうやら、事態は、私が思っていたよりも
大変な状況になっているようだ。
たかが尻の穴付近に出来た膿を切って出すだけでしょ?
と思ったのだけれど、それはそれで、なかなかに大変な
ことらしい。
なにせ、自分の体ではあるが、自分では見えない部分
なので、状況がよく解らないのだ。
どうやら、ことはかなり急を要するらしいことは
わかった。だが、仕事人間である私は、粘った。
「先生、わかりました。でも、明後日退院できる
可能性は、ゼロなんですか?」
そう聞くと、先生は、渋い顔をして、
「まあ……明後日退院できなくもないですが、
術後の処置と経過観察が出来ないと……」
と言う。うん、つまり、可能性はあるわけだ。
私は、交渉を始めた。
「先生、この、術後の処置、と言うのは
病院でしか出来ないことなんですか?」
「まあ……出来ないことはないけれど……」
「では、どうか、その方向で考えて頂けませんか。
どうしても週末の仕事は外せないのです」
「でもなあ……術後の処置、結構大変ですよ?」
「大変でも、自分で出来ることならやります。
仕事に行けるのならば、必ずやりますから」
「……解りました。まあ、とりあえず、今日手術をして、
様子を見た上で、術後の処置が自分で出来る、というなら
明後日退院する、という事にしましょうか。
その代わり、週明けの朝イチには、病院に来るんですよ」
「わかりました! 先生、ありがとうございます!」
日頃鍛えた、コミュニケーションスキルによって、
私は、1週間の入院が必要なところ、2泊3日で退院
出来る、という権利を勝ち取った。
私は、自分の交渉力の高さに得意げになっていた。
ただ、惜しむらくは、この交渉が、ビジネスの現場で、
テーブルを挟んで行われたものではなく、私はお尻を
むき出しにし、肛門を挟んで、その穴を先生に見つめ
られながら行われていたことであった。
結果はカッコ良いのだが、シチュエーションはかっこ悪い。
極めて遺憾である。
が、まあ、事態はいい方向に進んだので、良しとしよう。
そう一息ついた私。
が、しかし、この後、この交渉によって、私自身を
恐怖のどん底にたたき落とすことになるとは、
このときの私は、知るよしも無かったのである……
(続く)
※※ 今日のまとめ ※※
仕事より、自分の体を大事にしよう
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